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2023.06.13 子宮頚がん検査の見方

春は健診のシーズンです。武蔵野市でも6月から子宮頚がん検診が開始されました。検診の結果が自宅に届き、子宮頚がん検診の結果をみてこれはどう考えたらいいのか、精密検査が必要と言われたけど私って ”がん” なの?と不安になられる方も多いかと思います。

子宮頚がん検診結果の見方は少し特殊で分かりにくいので、今回は解説をしていきます。

子宮頚がん検査の結果は大きく3つに分類されます。

NILM:異常なし

ASC-US:異常がないとは言いすぎですが、すぐに精密検査が必要とまでは言えません

それ以外:精密検査が必要です

わかりにくいのがASC-USです。

①頚がん検診では子宮頚部の腟に顔をだしている部分をブラシでこすって検査をします。腟内は雑菌が多く存在し炎症を起こしやすい状況があります。炎症が起きていると細胞に一時的な変化が起こることがあります。これによる細胞の変化は元に戻る異常で精密検査は必要ありません。

②一方で、子宮頚がんになるには正常→異形成→がんという段階を経ていきます。この動きを起こすのがHPV感染です。HPVは性交渉の経験がある方の8割が感染を起こし9割以上の方が自然に自力で追い出すことが出来るのですが、一部の方では持続感染を起こし細胞に変化を生じます。正常な状態から細胞に変化が起きてくるのは数年単位で変化が起きてきます。この場合には精密検査が必要となります。

ASC-USという結果が出た場合、検診時の検査のみでは①なのか②なのか判断ができないためHPVハイリスク検査を行います。HPVにはたくさんの型があるのですが、子宮頚がんに引っ張りやすいHPVは8種類が同定されています。これらの感染があった場合には②と判断し精密検査を行います。

精密検査はどのようなことをするのでしょうか?コルポスコープ下組織生検をいう検査を行います。異常が出やすい部分をよく観察し怪しい部分を数か所、組織(お肉)をつまんで検査に出します。

なぜこの検査が必要なのでしょうか?細胞診(検診)だけでは判断がつかないのでしょうか?

異形成という段階は正常に近いところから軽度→中等度→高度と変化していきます。どの深さまで異常な細胞が入っているかでその程度を判断します。がん検診で行う細胞診は細胞の形を診る検査です。そのため深さの判断をすることはできません。細胞診の結果である程度の推測をすることは可能なのですが確定をすることができないため精密検査が必要となります。

お肉をつまむなんて痛そうだし怖い、出血も多いのではないかと思われるかもしれません。子宮の出口は痛みを自覚しにくい場所ですので強い痛みが出ることはありません。出血に関しては処置後にタンポンを挿入し3時間ほど圧迫止血を行うことでほとんどの方は出血が止まります。タンポンを抜いた時に多めの出血が付着してきますが、その後にだらだらと出る出血がなければ心配はいりません。当院には婦人科腫瘍専門医が2名在籍しているためこれらの検査に習熟した医師が検査を行います。

異形成の診断がついた後のお話はまた後日。

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