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2023.09.26 月経困難症

月経困難の定義は月経に伴う下腹部痛や腰痛、吐き気・頭痛・疲労・脱力感・イライラなどの不快な症状が出て、日常生活に支障が出ることを言います。

病気じゃないから我慢しないと、鎮痛薬は癖になるから使わない方がいい、今はそんな時代ではありません。

機能性月経困難症

月経時に子宮内膜から出るプロスタグランジン(PG)という物質の作用が原因となって起こる。月経がはじまったばかりの若い年齢に起きやすい。年齢とともに改善していくことが多い。

器質性月経困難症

子宮筋腫・内膜症・腺筋症など病的な要因により起こる。年齢とともに悪化していくことが多い。手術により病変を除去することにより症状改善を期待できる。症状の根本原因は機能性月経困難症と同じ。

月経困難症は大きく分けて上記の2種類があります。器質性月経困難の場合には手術により症状の改善を期待できる場合がありますが手術以外の方法での対応方法はどちらも変わりません。

① 鎮痛薬 ロキソニン・イブプロフェンなどのNSAIDsが有効。PGの産生を抑える働きがある。たくさんPGが産生された後に飲んでも効果は弱い。早めの内服が効果的。NSAIDsは15歳以下では基本使えないためカロナールなどのアセトアミノフェンを使用。アセトアミノフェンは脳に働きかけ痛みの伝達を阻害する効果がある。PG産生抑制効果はないため鎮痛効果はNSAIDsにやや劣る。

② 漢方薬 子宮の収縮を抑える働きのある薬を月経時に内服するもの、体質改善や女性ホルモンの安定化を目指し毎日内服をするものなどがある。個々の症状に応じて使用する漢方薬は異なる。副作用は少ないが飲む量や回数は多い。効果の出方には差がある。

③ 超低用量・低用量ピル 女性ホルモンをお薬で調整する薬。定期的に内服することでお薬の量に女性ホルモンが安定する。痛みがあっても鎮痛薬が効かないほどの痛みになることはない。月経量も減るため月経量が多い人に有効。また、排卵抑制効果もあるためPMSの症状がある人にも有効。内服開始時は軽い吐き気・頭痛・不正出血などを伴うこともあるが数日~で軽快することがほとんど。慣れてくると月経移動もお薬で可能。定期的に月経を起こす必要がある。月経があることで悪化する内膜症などの器質的月経困難症がある場合、最初はいいが徐々に月経痛が悪化する場合もまれにある。1日1回

④ 黄体ホルモン 子宮内膜を薄い状態にキープし月経がない状態を作る薬。月経がないので痛みのコントロールはピルより良い。排卵抑制効果もあるためPMSの症状にも効果が期待できる。最初のうち、不定期な不正出血がかなりある。月経がないため内膜症や腺筋症に対しては治療効果を有する。子宮筋腫に対する縮小効果は期待できない。1日2回

⑤ ミレーナ(黄体ホルモン付加子宮内リング) 子宮内腔に黄体ホルモンが付加されている小さい器具(リング)を入れて子宮内膜を薄くして月経量の減少や月経痛の改善を図るもの。リングを入れる際に痛みや立ち眩みを伴うことがある。お産経験がない人には難しい場合がある。月経自体は楽になるが異物が入っているため期間が延長する場合がある。挿入後しばらくは不正出血が続く。メリットは内服をしなくてよい。定期的な内服が苦手な方にお勧め。一度挿入すると5年間有効なためコスパは最もよい。局所的(子宮だけ)に効く④のイメージだが全身的に効いているわけではないため排卵抑制効果はない。PMSの改善効果も期待したい方には不向き。

⑥ 偽閉経療法(リュープリン(注射)・レルミナ(内服)など) お薬で閉経状態に女性ホルモンを下げて月経を止める方法。更年期障害の症状が出る。子宮筋腫の縮小効果も期待できる。連続して使用すると骨粗しょう症のリスクがでるため半年までしか継続して使用できない。閉経間際の方に使ったり、手術前に病変を縮小させるために使用する。黄体ホルモン療法の不正出血を止めるために短期間使用する場合もある。

月経困難症の治療には上記のようにたくさんの方法があります。それぞれの方の症状や改善させたい症状、年齢に合わせて治療方針を決定します。

③~⑥はホルモン剤による治療です。将来的な妊娠にたいするリスクを心配される方も多いと思いますがいずれも将来的な妊娠に不利に働くことはありません。薬剤の中止やリングの抜去後は1-2か月で排卵が戻ります。

学生さんで月経痛がひどく学校を休みがちになる場合、成績などへの影響や学校の出席日数などにも影響を及ぼします。試験の時に月経がぶつかってしまうと本来の力を発揮できないなんてこともあるでしょう。最近は月経困難がつらく、大事な受験の時や試験の時に困らないようにしたいとご相談を受けることも多いです。薬の開始時は、一時的な副作用が表れることがありますので大事なイベントごとに困らないようにするためには早めの受診をお勧めいたします。

受験の時に一時的にホルモン治療を導入された方はその後も継続されることが多いです。月経痛がない生活がいかに楽であるかをみなさん感じているようです。

社会人でも月経困難で就業能力の悪化、休業などが起き、社会全体に与える経済損失はかなり大きいという算出もあります。

月経痛でお困りの方は悩まずご相談ください。

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